自分より前の走者とは自分よりも前に走者がいるときにその走者を追い越してしまったらどうなるか考えたことがありますか?
打者が打席に立って投手のボールを打とうとしているときは、その時点で走者とは塁間以上の差があることになります。また、走者同士でも塁間以上の差があります。基本的にはこれだけ離れた状態で打者が打ったりすることで走者がスタートします。その状況を考えると、前の走者を追い抜くなんてことは起こりえないように思いますが、果たしてそうなんでしょうか。今回はそのルールについて解説してみたいと思います。
前の走者を抜くことなどあるのか
通常、野球をしているシーンを考えると、前の走者を追い抜くことなど基本的に想像できないような感じがしますよね。
ランナー同士距離が離れとるから抜けんやろ
追い抜く、というと前の走者に追いつかないといけない、と思ってしまうので、なかなか難しいように思ってしまいますね。しかしいろんな状況が重なったりすると、意図せず追い越してしまうことがあるんです。
まずは実例を見てみるのが早いと思いますので、それを見てみましょう。
メジャーリーグでの例
- 現地時間2021年4月1日
- メジャーリーグ開幕戦 ドジャース 対 ロッキーズ戦
- 3回表ドジャースの攻撃
- ワンアウトランナー1塁
- 打者は 4番 コーディ・ベリンジャー選手
この状況で打者が打った打球はレフトへ飛ぶ。レフトが打球を追い、フェンス際でキャッチ!!
と思いきや、ボールはグラブから飛び出しそのままスタンドインしてしまいます。
つまりホームランになりました。が、問題はここからです。
一塁走者のジャスティン・ターナー選手はレフトのグラブに収まった瞬間キャッチされたと思ったんでしょう。二塁を回ったところで一塁へ猛ダッシュで戻ります。打者走者は二塁の手前まで来ていたのですが、一塁走者のターナー選手は全力疾走で戻っているため、打者走者が全く見えていないようです。
そのままターナー選手は打者走者を追い抜き一塁へ戻りました。
このケースは誰がアウトになるのか
では野球規則ではどうなっているのかというと、野球規則5.09b(9)で規定されていて、後ろの走者がアウトになっていない前の走者を追い抜いたら、後ろの走者がアウトになると決められています。
上記の状況説明では一塁走者が打者走者を追い抜いたという表現をしました。
積極的に走塁していたのは一塁走者ではありますが、このケースでも後ろの走者=打者走者が前の走者=一塁走者を追い抜いたという扱いになります。
つまり、ホームランを打ったベリンジャー選手がアウトとなります。
ただし、一塁走者に関してはアウトにはならないので、ホームランによる安全進塁権はそのままです。
なので本塁に返ることでホームインが認められます。
記録はどうなるか
今回の記録は以下の通りとなります。
打者のベリンジャー選手 | 一塁走者のターナー選手を追い越したのでヒットと打点1がつく |
一塁走者のターナー選手 | 本塁に返ってきたので得点1が記録される |
打者のベリンジャー選手に本塁打がつかないのが一番かわいそうですね。
自分自身が抜き去ってしまったのならまだしも、本人には過失は無かったでしょうし。
とはいえ、ランナーの気持ちもわからなくはないですね。
一度グラブに収まったようにも見えるので、全力で戻る気持ちもわからなくはないかなと思いました。
エイプリルフールにうそのようなほんとの話が起こった例でした。
日本のプロ野球の例
幻のサヨナラ満塁ホームラン
日本で起こって有名なのが、日本ハムファイターズ在籍時の新庄剛志選手の幻のサヨナラホームランが有名ですね。
- 2004年9月20日
- ダイエー(現ソフトバンク) 対 日本ハム戦
- 9回裏日本ハムの攻撃
- ツーアウトランナー満塁
- 打者は 1番 新庄剛志選手
9回表の時点で12対9と3点差をつけられていましたが、3点差を追いつき12対12となり、上記の場面となった。
ダイエーの三瀬投手の投げたボールを見事左中間に運びスタンドイン、サヨナラホームラン!
となるはずでした。
サヨナラホームランとなり歓喜の日本ハムナイン。そんな中、一塁を回る新庄選手と一塁走者であった田中幸雄選手が一二塁間で田中幸雄選手と抱擁。走っていた勢いもあって、抱擁する瞬間にコマのようにクルッと2人が回ってしまいました。
球場の雰囲気的にはよくあるサヨナラホームランのようにホームベース上で見方ナインが駆け寄り頭をバンバン叩いて祝福。サヨナラホームランの雰囲気でヒーローインタビューとなりました。
普通であれば12対16で日本ハムの勝ち、新庄選手には本塁打1、打点4がつくことになります。
ただ、クルッと2人が回った瞬間に新庄選手が田中選手を追い越してしまっています。
この時点で後ろの走者、つまり新庄選手はアウトとなります。
ただ、不幸中の幸いと言うべきか、その出来事が起こる前に3塁走者が本塁に到達していたため、その得点は認められます。
ではこの記録を確認
この時の新庄選手の記録は、ヒット、打点1となります。
3塁ランナーが走者を抜かす前に本塁に到達していなかったら同点のまま延長戦になるところでした。
インパクトはないがこのような例も
こんなのもありましたということで、ライトな感じで説明します。
2015年10月14日 クライマックスシリーズヤクルト対巨人戦、七回ワンアウトランナー一塁で長野選手の打球はセンターへ。センターが捕球したかに見えたが、キャッチしていない判定。一塁走者の阿部選手は捕球されたと思い一塁へ戻る。長野選手は捕球されたかーという感じで二塁方向へ進む。結果、長野選手が阿部選手を追い越してしまうことに。
この場合は後ろの走者である長野選手がアウトになります。
これまでの例と違うのはボールデッドになっていない事例ですね。
ちなみに走者を抜かしたからといってボールデッドにはなりませんので、後ろの走者がアウトになってもまだインプレーのままです。一塁走者は進むか戻るか判断して行動する必要があります。
プロでも結構ある話だった
起こっている事例のほとんどが、外野への飛球を捕球されたと思って走者が全力で戻る際に、打者走者が走者を追い抜いた形となってしまうことが多いようですね。
観戦やプレイ中なども含めて、リアルタイムでその事例に出くわすことは稀かもしれませんが、なんだかんだでプロ野球でも発生している事例は意外とあるようです。
今回は走者を追い抜いてしまったらどうなるかを事例も含めて解説してみました。
興味本位で走者を抜いたりしたらあかんで