プロ野球などで、ホームラン性の当たりをフェンスによじ登ってキャッチしたりする光景は見たことがあると思います。ではキャッチした後、その選手がスタンドに落下してしまった場合はどうなるのでしょう。ホームラン?アウト?今回はそのプレイについて解説してみたいと思います
日本ではフェンスによじ登ってキャッチは有名
確かに日本では元広島カープの赤松選手や天谷選手の忍者キャッチなどが話題になりました。
ただ、この時はフェンスによじ登ってキャッチしてグランドに降り立っています。
この場合は皆さんアウトだと理解できていると思います。
フェンスによじ登って捕球してもOK!ということもこの件で理解していますね。
日本では捕ったあとにスタンドに入るのは見たことないで
たしかにそうなんですね。
日本のフェンスは高い球場が多くなり、フェンスの上まで到達できる球場が減ってきていることもあるかもしれませんが、昔を含めても実際のプレイは見たことが ないのではないでしょうか。
メジャーリーグ実際に起こったプレイ
日本では例がありませんでしたが、さすがはMLB、メジャーリーグにはそんなプレイがありました。
それは2018年8月1日のインディアンス 対 レッドソックス戦での一コマです。
レッドソックスの打者、ハンリー・ラミレス選手が放った打球が右中間に上がります。
インディアンスのセンターのオースティン・ジャクソン選手はその打球を追い、フェンスに向かってジャンプ!
キャッチした勢いでフェンスの外まで落下してしまいます。
百聞は一見に如かず。MLBでの実際に起こったプレイをまずは見てみましょう。
結論は「アウト」
映像を見ていただければわかると思いますが、結果は「アウト」です。
これ、実は年齢が高ければ高いほど勘違いしている人が結構多いですが、間違いなく「アウト」です。
MLBでのプレイですが、日本の野球規則も同じです。
では、なぜアウトになるのか。野球規則で確認してみましょう。
野球規則では捕球可能な位置について言及している
野球規則の5.09aにおいて、打者がアウトになるケースについて言及しています。
5.09a(1)では、フライを取ったらアウトですよ、と書いているのですが、その【原注1】の部分に、捕球可能な範囲について明記しています。
そこでは、捕球するためにダッグアウトなどに手を差し伸べてもいいけど、足が入ったらだめですよ、と書いています。つまり、足がグラウンド内でグローブが空中でボールデッドのゾーンに入っている状態でフライを取ったらアウトですよ、ということです。
ただ、ダッグアウトやスタンドなどの箇所でフライを捕るために野手はグラウンド(ダッグアウトの縁も含む)上または上方に片足または両足を置いておく必要があると書いています。
逆に言うと、ボールデッドゾーンに入って取ってはいけないということです。
今回の動画のケースだとスタンド(ブルペンのとこ)に初めから入ってキャッチしたらダメ、ということですね。
今回のケース
今回の動画のケースはボールを捕球する瞬間、下半身はグラウンドの中にあることがわかると思います。
捕球後その勢いでスタンドを越えていますが、ボールは落としていません。
そのため、今回のケースではアウトとなります。
ファールボールを追って捕球するケースなんかだと、捕球後にダッグアウトや観客席に入る場面は見たことがあるのではないでしょうか。
その場合でも今回と同じです。足がグラウンドに残った状態で捕球し、ダッグアウトや観客席に勢い余って入ったとしても捕球していればアウトです。
もし、スタンドに入るときにボールを落球していた場合はホームランになります。
もちろんファールの場合に落球していたらファールです。
もしランナーがいた場合
今回のケースではランナーがいませんでした。ですので、打者がアウトになるだけです。
2アウトの場合は捕球した瞬間3アウトになるので、ランナーがいても関係ありません。
ではもしノーアウトまたは1アウトでランナーがいた場合にこのプレーが起こった場合はどうなるのでしょうか。
捕球後にボールデッドゾーンにはいってるから、ランナーは1つ進めるんや
そうなんです。実は先ほど説明した野球規則5.09a(1)の【原注1】にはもう少し説明があるんです。
それは、捕球後ボールデッドゾーンに入ったり倒れこんだりした場合はボールデッドになって、走者は5.06b(3)(c)を参照せよ、と書かれています。
野球規則5.06b(3)は走者が1つ塁を与えられる場合の説明が書かれています。
その中の(c)に捕球後ボールデッドゾーンに入ったり倒れたりした場合(に走者は1つ塁を与えられる)、と書かれています。
つまり
捕球後ボールデッドゾーンに入ったり倒れたりしたら、走者は1つ塁を与えられる
ということです。
捕球しない方がいいケースも出てくる
守備側としてはホームランになるよりも1アウト取ってランナーが1つ進む方が全然マシなので、チャレンジすることに意義はあると言えますね。
ただ、ファールボールの場合はどうでしょうか。とった後にランナーが進んでしまう恐れがあるなら無理して捕らない方がいい場面もあるかもしれません。状況によってはファールにした方がいいケースも出てきますね。
以下の動画はわかりやすいケースだと思います。
1アウトランナー2塁3塁の場面でファールボールを飛び込んで捕ってアウトになるのですが、その後すぐにランナーに進むよう審判が促しているのがわかると思います。(5:52ぐらいです。再生するとそこから始まります)
この場合前述の説明の通りとなりますが、まとめるとこのような形となります。
- ファールボールを捕球したのでアウト
- 捕球後ボールデッドゾーンに出たのでボールデッド
- ランナーは1つ進塁できる
つまり、ホームランなどのフェアゾーンの場合はほぼ捕った方がいいことになると思いますが、ファールボールの場合は必ずしもボールデッドゾーンに飛び込んで捕るのが最善策とは限りません。
ただ、瞬間的に判断しないといけないことですので非常に難しいケースとなります。
野球人としてはなんとか捕球してアウトにするというのが本能的に植え付けられていると思いますので。。
フェアもファールもルールは同じ
今回は捕球後にスタンドに入るケースについて説明しました。
基本的にフェアでもファールでもルールは同じです。
草野球などの場合はグラウンドに白線でボールデッドゾーンが引かれていることなどもあると思いますが、その場合でもルールは同じですので、走って捕球した勢いでボールデッドのラインを超えないように気を付けましょう。
ちなみに年齢が高い人が勘違いしているのは、人気の野球漫画「ドカベン」で捕球後スタンドに入ってホームランになるという場面があることがかなり影響しているようです。それぐらい影響力がある漫画だったということがうかがえますね。
その描かれた当時のルールがどうだったかまではわからないので何とも言えませんが、今の野球規則では間違いなくアウト、ということです。
なんにせよ、ケガはしないように注意するんやで