打者でスイッチヒッターというのはプロ野球でもよくいらっしゃいますね。でもスイッチピッチャーというのはあまりお目にかかることはありません。では、もしどちらの手でも投げれるピッチャーがいた場合、いつでもどちらの手で投げてもいいのでしょうか。今回はそんな両利きの投手がいた場合、どのようなルールになっているのか解説してみたいと思います。
まず有名な漫画から
両利きの投手で有名なのは野球漫画の金字塔、ドカベンで出てくる投手である木下次郎、通称”わびすけ”ですね。
赤城山高校の投手で、関東大会での試合で右か左かどちらで投げるかわからない!というユニークな投手として登場しています。
どちらにグローブを持っているかわからせないようにして、プレートから足が出るときまでどちらで投げるのかわからず、打者がタイミングを取れず苦戦するというシーンになっていました。
ルール上問題ないのか
上記のシーンが描かれている当時は野球規則上でも明確なルールはなかったようです。
この時点では両手投げの本格的な投手が現れることを想定していなかったんですかね。
そう・・・この時点では・・・
この後えらいことになるんやで
現実に現れた両手投げ投手
メジャーリーグで本格的な両手投げの投手が現れます。
2008年にプロ入りした、パット・ベンディットいう投手です。
2015年にメジャーデビューするのですが、それまではマイナーリーグで投げていました。
マイナーリーグでデビューした2008年のデビュー戦で両利きを披露することになるのですが、これまで想定しなかったシーンを演出することになります。
スイッチヒッターとの対戦
マイナーデビュー戦で登板した彼を待ち受けていたのは、両打ち、つまりスイッチヒッターとの対戦を迎えることになるのです。
単純に考えるとなんか楽しそうというか楽しみというか、興味が沸く対決、という印象ではないかと思います。
しかし、そこに立ちはだかったのは「野球のルール」でした。
この2008年のベンディット投手がデビューした時には両利き投手に対するルールはありませんでした。
スイッチヒッターのルール
まず、スイッチヒッターにはどのようなルールがあるか確認しましょう。
スイッチヒッターに対するルールは一部で定められています。
野球規則6.03a(2)では、投手が投球姿勢に入った時に打席を変えるとアウトになるというルールがあります。
「投球姿勢に入った時」とはサインを見ているときからになります。
近代野球ではわたしはこれでアウトになった人を見たことがありません。
あとよく表現として「スイッチヒッターは1球ごとに打席を変えてもいい」というのを見かけます。
ルールの理解としてはこれで間違いではありませんが、野球規則にそのように明記されているということではありません。
あくまでも他の野球規則を熟読した上で、そう解釈したという結論と言ったほうがいいのかもしれません。
スイッチヒッターのルールとしてはこれだけのようです。
スイッチピッチャー VS スイッチヒッター
そのうえで、両利きの投手と打者が対戦するとどんなことが起こるでしょうか。
一般的に右投手には左打者が有利、左投手には右打者が有利とされています。
代打やリリーフを出すのも、その有利な方向に働くように選手を選定する場面が往々にしてあります。
当然投手も打者も自分に有利な状況に持っていきたい思惑は出てきます。
その結果何が起こるか・・・
打者が左打席に立つ
→投手が左で投げようとする
→打者がそれを見て右打席に立つ
→投手がそれを見て右で投げようとする
→打者がそれを・・・・
いつまでやるんじゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!
とまさかの地獄の無限ループに陥ることになります。
結局どうなったか
どちらもルールに違反しているわけでもないので、どちらも譲らず、結局主審がその場をさばくこととなりました。
まずは打者が打席を決める、その後投手がどちらで投げるかを決めるように指示したものと思われます。
結局打者は右打席を選択。後の選択権がある投手は右で投げることを選択します。
そして右対右でこの対決は行われ、結果は三振で投手が打者を打ち取りました。
ルールの改正
スイッチヒッターVSスイッチピッチャーが実現したことで「どちらも譲らない問題」が生じたため、これに対するルールが導入されることとなります。
現在ではそのルールは野球規則5.07fに「両手投げ投手」という項目で決められています。
その内容を要約すると以下のようになります。
- 投手板に触れる際、どちらかの手にグラブをはめ投球する手を明らかにする
- 打者がアウト、走者になる、攻守交替、代打、投手が負傷するまで変更不可
- 投手負傷で同一打者に投球する手を変えた場合、それ以降は変更不可
- 投球する手を変えた場合の準備投球は不可
まとめて言うと
投手が先に投げる手を決め、同一打者では変更不可(負傷時除く)となり、負傷によりやむを得ず同一打者で変更した場合はそれ以降変更後の手でしか投げれなくなった
ということですね。
では1つずつ見ていきましょう。
投手は投げる手を最初に決める
新たな打者と対戦するたびに、どちらで投げるかをグラブをはめてはっきりさせないといけません。
このルールによって、投手の方が先に決めることが決まったので、スイッチヒッターとの対戦では打者が有利な形となることがわかります。
基本的にその打者との対戦が終わるまでは変更不可
基本はその打者とアウトやヒットなどでの決着がつくまでは投げる手は変更できない、というルールです。
ただし、1球以上投げた後に代打が出された場合は打者が変わるので変更が可能です。
例外的には、牽制などで攻守交替した時は次の回で同じ打者と対戦することになりますが、ここでは先ほどと違う手に変えても大丈夫、ということになります。
負傷の場合は例外を認めるがペナルティあり
もう1つの例外として、投げた時に肩を壊すなどで負傷を折った時は、同一打者でも投げる手を変えることが許されます。ただしその代償として、変えた手ではない(最初に投げていた)方の手に変えることはこの試合ではできなくなります。
その都度投球練習はできない
打者ごとに投球する手を変えたとしても、そのたびに投球練習をしていては試合が進みませんね。
そのため、投げる手を変えても投球練習はできません。
両手投げ投手は基本的に打者ごとに手を変えることができる
というわけで、昔はルールがなかったけど、問題が生じたので今は両利きの投手に対するルールは決められていることがわかったとおもいます。
今回のタイトル「両手で投げれる投手はいつでもどちらで投げても良いのか」に対する答えは
基本打者ごとにしか変えられへんのやで
ということになります。両利きの投手に出会うことはそうそうないですが、覚えておいてくださいね!